北九州の歴史的近代建築を訪ねた旅のレポート、その2です。
北九州市旧大阪商船
最初にご紹介するのは1884年(明治17)に設立された海運会社・大阪商船の門司支店として使われていたこの建物です。 1917年(大正6)に竣工した社屋は建物の角にある八角形の塔が特徴です。門司港レトロを代表する旧大阪商船の建物。2月のこの時期は「ふぐと灯りとひなまつり」のメイン会場となっています。1階には大きなふぐのランタンが展示されています。
ただ、建物の内部はギャラリーとカフェでリビルドされていて、往時をしのぶものはほぼないといっていいでしょう。
かつての大陸航路の玄関口として建てられ、1階には待合室や税関の派出所を置き、2階を事務所としていた。建物の西と北面の道路側は煉瓦型枠のコンクリート、背面は木造モルタル塗りで、 かつては北面は直接海に面し、専用の桟橋が設けられていた。隅角部の二面に大きなアーチ窓を配しその上に八角の塔を立ち上げた特異なゼツェッシオン風の意匠である。平成6年(1994)に保存·修復工事が行われ、1階はイベント会場に、2階は門司港に関する海事史料館に当てられている。
〈建築MAP北九州/TOTO出版より引用〉
門司郵船ビル(旧日本郵船門司支店)
門司港駅の正面に建つ小ぶりな4階建ての建物が門司郵船ビル。旧日本郵船門司支店。門司郵船ビルは、1927年(昭和2)に竣工した鉄筋コンクリート造4階建の建物で、門司港駅(旧門司駅)の改札口を出ると、駅前広場越しに左右対称のファサード(建物の正面)が見えます。
1階に大きなアーチ開口をとる他はすっきりとした平坦な面と簡潔な窓配置でまとめられたアメリカ風オフィスビル。最上層にはアティック(屋根裏)風の小窓を配するなど、アールデコ的な折衷様式が現れている。 暖房、空調、給湯、エレベーターなど当時としては最先端の設備を誇っていた。 かつてはあちこちの細部にアール·デコ風装飾が配されていたらしいが、改修を受け現在は見ることができない。
〈建築MAP北九州/TOTO出版より引用〉
門司郵船ビルのエントランスホールは床のタイルが印象的ですが、何より目を見張るのがあのエレベーターです。
これがその有名な鉄骨むき出しのエレベーターです。また、エレベーターシャフトを蔓のように伝う階段手摺のアールが印象的です。
無骨です。門司郵船ビルの鉄骨むき出しのエレベーター
門司郵船ビルの内部は昭和2年の竣工(その後改装あり)を感じさせず小奇麗で、なおかつ往時の雰囲気を保っている印象です。小腹が減ったら2階にあるレストラン「濱司」で焼きカレー、なんてのもお勧めです。雪の舞う中、飛び込んだ「濱司」で食べた焼きカレーは、アツアツで暖まりました。
ラジエーター状の暖房器具、見かけなくなりましたよね。
門司郵船ビルの雰囲気を堪能し次に向かったのが、
旧JR九州第一庁舎ビル(旧三井物産門司支店)
枯れたいい感じのビル、それが旧JR九州第一庁舎ビルです。旧三井物産門司支店として1937年(昭和12)竣工だそうです。今わ使われてはいません。ホテルが少ない門司港周辺。建築基準のほか、いろいろ満たさせないだろうけど、ホテルに転用したら素敵かもしれません。単調になりがちなスクエアなビルヂングの上端を内側にアールさせ、アクセントとして消しゴム状の練物を配しています。エントランスは黒い石材がアクセントを出しています。これも有名なレリーフが上部に飾られています。
設計者の松田軍平は旧三井倶楽部の設計者松田昌平の弟。コーネル大学を出てアメリ
カの建築事務所で修業、帰国して三井本店の工事などに携わった建築家。 この建物は戦前の関門地区随一の高層建築であった。幅広い柱型を建物頂部でわずかに内向きに傾斜させたり、その間の壁に膨らみを持たせたりすることで、ボリュームに柔らかさを与えている。腰廻りと玄関部に黒い石を用いる他はすべてモルタル仕上げで統一している。〈建築MAP北九州/TOTO出版より引用〉
旧JR九州第一庁舎ビルの表通りに面していない建物の背面は、質素にまとめられています。
旧JR九州第一庁舎ビルを正面から。内見できないのが残念です。 ここまでの撮影機材はSONYのα700と、MINOLTA AF17-35 F3.5 およびAF24-105
門司港エリア・まとめ
次回、歴史的近代建築を巡る旅(3)は、同じく門司港エリアの岩田商店、NTT門司営業所、三宜楼などをご紹介します。