2008年11月に北九州の歴史的近代建築を訪ねた旅の模様をレポートするシリーズ。2回目は「産業観光バスツアー」に参加した模様です。今回は、〈門司麦酒煉瓦館〉と〈関門製糖〉に伺いました。午後1時半、門司港ホテルを出発。チャーターしたマイクロバスに参加者は10名ほどです。
門司麦酒煉瓦館
ガイドの方に、大里エリアに栄えた「鈴木商店」の歴史などをレクチャーされながら、最初の見学地は〈門司麦酒煉瓦館〉。旧帝国麦酒(吸収合併を繰り返し、現サッポロビール)の九州工場事務棟として1913(大正2)年完成。鉱滓煉瓦(こうさいれんが)・・・製鉄などの際に生成される産業廃棄物、鉱滓(スラグ)で作った煉瓦が使われているのが特徴です。残念ながら内部は観光用に改装されていますが、その造形は素敵です。
サッポロビール九州工場本事務所(旧帝国麦酒門司工場)
ドイツ風のいかめしい城郭風の建物。 正面中央に破風を見せた塔屋やゴシック風隅小
塔のある勾欄式のパラペットなどが特徴的。基部以外には石を用いず、パラペットや窓台などもすべて煉瓦。内部は、 繊細な装飾模様を打ち出した金属板の天井(この時期の事務所建築によく用いられた) や暖炉、木製階段などが残されている。
〈建築MAP北九州/TOTO出版より引用〉
こちらはサッポロビールの醸造棟、とはいってもごく一部を保存したもの。今回はごく限られたエリアだが、内部を見学することが出来ました。
サッポロビール九州工場醸造工場
本事務所とともに同時期に建てられたが、 こちらは赤煉瓦である。 おそらく建設資材や機械プラントなどとともに、建物設計図面も一括輸入されたものであろう。 窓台やストリングコース、キィストーンなどに白い石を用いアクセントをつけている。鹿児島本線沿いに巨大で複復雑なボリュームを見せる。かなり改造され新しいステンレスのタンク、パイプ類で取り囲まれてしまっているが、煉瓦造としての魅力は十分。〈建築MAP北九州/TOTO出版より引用〉
往時のドイツ製醸造機器が残っています。観光資源として保存されたものの、赤煉瓦プレイス開業時のレストランはすでに閉店したように見える。片や新しいお店も出店してはいるが。門司駅とこの界隈の間には今でも更地が横たわり、このスペースを何かで埋めない限り、スケールメリットは生まれないでしょう。「門司ウォーターフロント」という再開発計画の途上だそうです。更地が埋まったころ、また訪れたいですね。
関門製糖
続いて産業観光バスツアーの目玉、関門製糖の見学へ。鈴木商店グループの大里製糖所として明治後期にスタートした工場・倉庫群が、外装は手を加えず内部に近代的な生産設備を設え稼動しているさまを今回見学することが出来ました。
関門製糖の敷地には物珍しい煉瓦造の建物がいっぱいだ。
さすがに工場内部の撮影は事前に禁止通達があったため、撮影はしていませんが、関門製糖の工場内部は清潔に整頓されていました。食堂など、内部の意匠にも妙味深い造形が見受けられました。途中から半端でない通り雨に遭遇しましたが、アテンドしてくれた関門製糖の広報部門のかわいいお嬢さんと、まじめな男の子が傘を用意してくれました。
これは有名な旧門司税関大里仮置場詰所。1910年(明治43)完成。これは普段見ることが出来ない海側からのショットです。現在は関連運輸会社の詰所となっています。今回、内部を見せてもらいましたが、蓋のしてある暖炉や、スチームヒーター、木製の床など、保存状態は悪くないです。
こちらは国道側から覗くことが出来る角度から。
「お砂糖は、ばら印。」出荷用のトラックでしょうか。これは関門製糖に出資している、大日本明治製糖の「ばら印の砂糖」と日本甜菜製糖の「スズラン印の砂糖」を、関門製糖が受託生産しているからです。
今回の産業観光バスツアーは週末の平日限定というもので、A900で撮ってみたい風景を収める絶好の機会となりました。企業側の受け入れ態勢もあるだろうし、代休ももらえないかもしれない。それにあまり大勢でこられても、やはり土日対応は難かしいだろうけれど、企画自体はとってもいいものだと思います。関門製糖での滞在は1時間半ほどでしたが、人情味のある社員の方たちの対応が印象に残ったツアーでした。
門司中央市場
門司区の中心部に戻ってぶらぶらしていると、地元の有名店〈朋友〉(ポンユウ)のくたびれたお店に遭遇。営業しているのかしら。
老松町の〈中央市場〉も味のある看板建築が特徴。通りに入らなかったことを後悔しています。
魚住酒店の角打ち
三宜楼近くの〈魚住酒店〉は17時少し前なのに角打ち客が一人もいない。金曜日のこの時間、こんなものなのだろうか。角打ちしたことはないけれど、立ち飲みする気分でもないので、このままホテルへ引き上げます。
※角打ち(かくうち:酒屋の店内において、その酒屋で買った酒を飲む行為。また、それができる酒屋のこと)
北九州再び。歴史的近代建築を巡る旅(2)まとめ
ここまでの撮影機材はSONYのα900と、MINOLTA AF17-35 F3.5 およびAF24-105 でした。次回は、歴史的建造物を巡る旅(3・了)として、河内貯水池・八幡駅周辺の模様をお送りします。