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先輩が後輩に贈る「プレゼント」が出来上がるまでのドキュメンタリー 「映画 けいおん!」感想


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先輩が後輩に贈る「プレゼント」が出来上がるまでのドキュメンタリー 「映画 けいおん!」感想

今回はネタバレしない方向で「映画 けいおん!」の感想をまとめておきます。ざっくばらんな感想は改めて。
多分このブームお正月まで続きそうだし。細かいこと、まだまだ書きたいし。
不満じゃないけど、注文つけときたい点もままあるのです。

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人気アニメの映画化の本作では、私立桜が丘女子高校に在籍する主人公、平沢 唯(CV:豊崎愛生)たち軽音楽部メンバーの何気ない日常がTVアニメ同様、ユーモアや萌え要素を交えて描かれる。
原作は「まんがタイムきらら」でTVアニメ2期終了と同時期に連載の最終回を迎えた4コマコミック「けいおん!」。因みに作者のかきふらい氏は、その素性を一切明かさないことでFANの間でも話題となっている。
現在連載は再開し、女子大に進学した唯たちと桜高3年生の中野 梓たちの日常がそれぞれ描かれている。

ストーリーは至極簡潔で、TVアニメ2期24話「卒業式!」において、卒業する唯たち3年生4人が、一人残されるHTT(放課後ティータイムの略。唯たち桜高軽音部のバンド名)メンバー・中野 梓(CV:竹達彩奈)に渡したあるプレゼント。このエピソードはFANの間で「神回」と語られる感動回なのだが、劇場版ではこの一連の「儀式」を異なる視点で描いている。
唯たち3年生は梓に何かプレゼントが出来ないかと思い悩み、渡す物は決まったけど、じゃあ、どうやって作ろうか逡巡し、そしてついに完成したそれを渡す経緯をドキュメンタリー風にまとめているのだ。
TVアニメ版では残される梓視点(うけ)で描かれたため、梓が受け取ることとなるプレゼントは「サプライズ」でなくてはならない。当然TVを見るFANにもそのプレゼントの中身は伏せられており、それが感動を呼んだ所以でもある。
だが、劇場版では3年生視点、特に唯視点(せめ)で描かれるため、プレゼントの製作過程を描くことが出来た。
ただ、劇場版が初見の観客の感動の度合いは、アニメ2期、特に24話を観ていないと半減してしまう。
劇場版公開後のTSUTAYAの「けいおん!」コーナーは「レンタル中」続出で、特に8巻&9巻はレンタル困難な状態が続いていることから見て、観る側も予習(復習)に余念が無い様子が窺える。

あれだけ大々的に劇場版をプロモートして、蓋を開けたらFANムービー、という批判がでてくることは製作サイドも織り込み済みだろう。しかし、「けいおん!」という作品が製作委員会の綿密なマーケティングと果敢なチャレンジ精神、関係者が舌を巻くほどの徹底した複合ビジネス展開の上に成り立っているいることを、ひとつの現象として捉えれば、劇場版から新規顧客を創造するチャンスは大いにある、と踏んでいるのかもしれない。

本作では原作コミックで描かれたエピソードの中から、TVアニメで取り上げられなかった幾つかをちりばめつつ物語が展開する。劇場版でも原作を大事にする姿勢はディープなFANであるほど好感が持てるものとなっている。その内「大ネタ」がひとつあるのだが、この描写は劇場で販売しているプログラム(800円)を購入することで、更なる満足を得ることが出来る。FANならぜひ入手することをお勧めする。総作画監督を務める堀口悠紀子氏(本作の製作スタジオ・京都アニメーションのアニメーター)が手がける一連のキャラクターデザインを見て思わずニンマリすることだろう。
最近のアニメの特徴として「親」の不在が挙げられるが、本作でもテレビアニメシリーズを通じて主人公たちの家族、特に「親」が出てこない。しかし劇場版ではロンドン渡航を未成年の女子だけでどうなのよ、というネガティブな観客の反応を予め考慮した対応となっている。

映画けいおん!」はHTTメンバー5人が卒業旅行でロンドンへ飛ぶ、という舞台設定がなされているが、前記の通りテーマはあくまで「プレゼント」が出来るまでのドキュメンタリー。だがそこは劇場版。お話を膨らませつつ、初見の観客たちにもHTTメンバーの「結束」がいかに強いものかをわかってもらう必要がある。そして一連のエピソードと演出は感動を生む布石として成功している。
実質的に劇場版の主人公と言っても過言ではない2年生の梓はアニメシリーズ中で常にしっかり者として描かれてきたが、本作ではそんな梓も一人残される寂しさに苦しみ、それでも卒業する3年生4人たちとの卒業式までの残り少ない日々の中、変わらない何かを見つけるまでを丁寧に描いている。
もともと「けいおん!」というタイトルなのに、ほとんど演奏シーンが無いことで有名だったTVアニメ版と比較してもバンドとしての演奏シーンはふんだんとに用意されているので、これから観るFANは期待していいと思う。楽器やPA関連の小道具もしっかり描かれており、主人公たちのキャラクター造形、サブキャラ、モブキャラだからといって手を抜かない作画、美しい背景など、「観る者をその気にさせる」アニメーション作品としての最初の関門をクリアしている。ピントずらしやカメラのポジションなども凝っており、このあたりは「けいおん!」シリーズを手がけてきた京都アニメーション(その名の通り京都に本社・スタジオを持つ特異なスタジオだ)には拍手を送りたい。

先ほど、ある出来事を別の視点から描いたと書いたが、本作ではもうひとつある出来事を別の側面から描いている。TVアニメ2期後期のオープニングで描かれた主人公たちの「ある行い」が実はこんな経緯で行われたものだった、というもの。製作時期が逆転しているため、矛盾点が無いわけではないが、このエピソードは桜高軽音部の顧問で主人公たちのよき理解者であり、同校軽音部の先輩でもある教師、山中さわ子(CV:真田アサミ)のバンドにかけた心情の違いから生じる未練を上手に絡めて描いている。

けいおん!」シリーズ一連の監督を務め、劇場版でも監督を務めた山田尚子氏(京都アニメーションのアニメーター)は女性の視点で女子が共感できる演出を施し、同時にヲタをも満足させることに成功している。その執着ぶりは主人公たちの制服のスカートから覗く「脚」の描写に顕著に現れている。プリーツスカートの裾が僅かに翻り、少しだけその奥が覗けるあたりとか、渡り廊下で体育座りをしているキャラクターが立ち上がる際、一旦太股をハの字に内側に絞ってから立ち上がる描写などは思わず唸ってしまう。
全般「けいおん!」というアニメ作品は決して「おパンツ」を見せない深夜アニメとして知られていた一方、作中に散りばめられたプチ・エロ要素が多いと公私共に認められていたと思う。このあたりは主人公たちのまぶしい脚の描写であったりするのだけれど、劇場版でもそうした要素は満載で、たとえばそれは揺れるムギ(琴吹 紬・HTT3年生4人の内の一人の通称。CV:寿 美菜子)だったりするのだけど、多くは語るまい。このあたりもぜひ劇場で確認して欲しい。

TVシリーズけいおん!」は1期14話と2期27話で構成されており、演出の方向性がまったく異なる。1期はいわゆる「萌え」ベクトルで全般演出がなされており、要所要所で感動方向へ舵を切るテイストだったと認識しているが、2期から「萌え」要素は影を潜めた。この2期から劇場版へ通じる一連の主題は「無垢」と「絆」だと思う。作中の主人公たちは面白おかしく日常を過ごしていて、そこにはトラブルや軋轢やプレッシャーというものは無い。彼女たちにはやりたいことしかないからかもしれない。
それでもやらなければならないことは時折あって、彼女たちはそこでの不安や葛藤を乗り越え、ひとつの絆で結ばれている。
やりたいことしかないキラキラ輝く世界。無垢でいられるけど、虚無ではない世界。決して一人じゃない世界。
慌しく日々を送る私たちは時々ひどい孤独感に苛まれることもあるけど、それは一面の見方に過ぎない。「つながり」は実はたくさんある。
それでも不器用な私などは一歩踏み出せずにいる。そんな私の、そして貴方の物事の見方を変えるチカラを「映画 けいおん!」は持っていると思う。


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