映画「おおかみこどもの雨と雪」を観た。
事前の評論やインプレは一切見ないでこれを書いています。
【7月27日追記】冨野はんの雑感は参考にしてましたね。ごめんなさい。
※ネタバレ要素が含まれています。気になる方はご注意を。
公開初日、横浜ブルク13、9:30の初回を鑑賞。
東宝はん配給だけあって公式サイトに公開館の紹介がないくらいの余裕なのだろうか。そのせいもあって、シアター5(186席)の3割程度の入り。他はたくさん入っているのでしょうか。
さて、まずタイトルなのだが、「花」が産んだ子供は「雪」が先で、「雨」は翌年生まれる。しかし、タイトルは「雨と雪」。ここに何か意味はあるのだろうか。
「おおかみこども」としての自らの「進路」を「その形容の通り」選択した順なのかしらね。言い方を変えるなら、「雪」は「おおかみこども」だけど、「おおかみおとな」にはならなかった、とね。
相変わらずキャラデザ(というと語弊があるが、要はポスター画)と実際の作画の乖離が酷い。以前のエントリでも書いたが、この乖離は作品を観る者の評価基準に大きな影響を与えると思うのだが。実際の作画は表情にほとんど陰影のない従来の細田作品のそれ。加えてデッサンもラフなので、パートによって作画マンの個性が結構出てしまっていて、まずまず見られる「花」と全くダメな「花」という差異が生じてしまっている。
卑近な例で言うなら「ココロコネクト」の原作ラノベの表紙絵を担当する白身魚はんと、アニメ版のそれ以上の乖離である。
この件について、細田監督はじめ、製作側はどう思っているのだろうか。
基本、「親離れ」「子離れ」をテーマにした本作は、父親に先立たれ、シングルマザーとして懸命に子育てを行う「花」と、年子の兄弟「雪」と「雨」の成長の軌跡を綴った物語である。
姉の「雪」と、弟の「雨」は進む道を異にする決断を下し、「花」が母親として、彼らの進む道を容認するまでを描いている。
ただ、物語の展開は若干長談にすぎるのではないか。
特に、物語終盤、「花」が「雨」を追い、森に分け入る件などは、あれだけ熱心に勉強して「彼ら」を育てることを決めた割には少し判断間違っていませんか?と思うところである。
もっとも、ここで「子離れできない母」の伏線を張っておかないと、「雪」のボーイフレンドへの告白や、「雨」の決断を許し見送る「花」を描くラストに繋がらないのは分かるけども。
あの一連のシーンは長かったなと。
それと、「雪」の告白のシーンの変わり身のそれは予め演出が分かっちゃった人、多かったんじゃないですか。
わたしは演出意図は異なるも、映画「ラブレター」の図書室のシーンを思い出しました。
少しドキッとするシーンでは「花」が子供に授乳する際、普通に乳首がピンク色に描かれています。出産後ならあんなきれいなピンクには。。。というのは置いといて。。。
それと、畑を耕す際にかがんだ「花」のジーンズの腰から普通にパンツが覗いています。
全般本作は大学生で身籠る「花」の描写が結構ナチュラルに描写(性交渉を連想させるそれとつわりなど)されるものだから、夏休みの親子連れ映画気分で観に来たお父さん、お母さんは、子供に質問攻めにされそうな予感が。。。
また、一部のネット情報で、富野由悠季はんが本作をべた褒め、などと書かれていましたが、そのコメント全文を読むと、決してそうではないことがわかる。「確かにチャレンジングな作品ではあるが、粗はたくさんあるし、でもそれはここでは言わない」と仰っている、と私は解釈したし、むしろ、何を言っているのか分からない。
引用になるが、「『アニメ映画というレッテル』を貼られてしまうのが無念」というのはどういうことなんだろう。だって、今作は「アニメ映画」でしょ。レッテル以前の話だし、「アニメ」だから表現できる手法を使ったからといって、何が「無念」に繋がるのかが分からない。
氏の言うところのジャンルの話にしても、まず、今作は「変身物」でしょ。それと、「親子の子育てにおけるそれぞれの立場における葛藤」をテーマに描いた作品なら過去に少なからず存在しますが。。。
瞬間思いつくものなら山田洋二監督の「息子」がそうだし。思い返せない訳じゃない。
それと、ロシアから個人輸入され、いまは施設で保護されているオオカミに「雨」がこだわる理由、二人(2頭)は同じ関係だからでしょうか。自然界で生まれたわけでもなく、種として存在するだけ、という。
それにしても「雨」の子孫は。。。いないよねえ。
。。。ああ、父親と同じことをすればいいのか。。。
鑑賞中、泣けるシーンは少なくありません。今日の私は昨日までの仕事の鬱状態を引きずっての鑑賞でしたが、もっと気分のいい状態なら、もう少し、好評価だったかも知れません。
「雪」のクラスに転校してきた「草平」が「雪」に向かって吐く台詞に「臭い」の要素を持ってくるあたりとか、悪くない演出はありつつも、どうしても作画タッチが好みでない点と、脚本に起因すると思われる起伏の乏しさもあり、もう一回足を運ぶほどのものではなかった、としておきます。
さあ、ようやく届いた映画「けいおん!」でも観るとしようか。