AFアダプター〈TECHART LM-EA7〉という、ソニーα・Eマウント用電動アダプターというものがあることを、2020年7月1日、今更ながら知りました。訊けば、2016年初頭にはリリースされているというのだから、相変わらず情弱なmenehuneなんですが、拙ブログでも何度かに分けて紹介してきたソニー〈α7III〉とAF化したミノルタのオールドレンズ群との相性を確認せずにはいられず、程度の良さと価格のバランス優先で入手しました。今回は〈TECHART LM-EA7〉の操作性と、ミノルタ・オールドレンズによる作例紹介です。
- 〈TECHART LM-EA7〉とミノルタオールドレンズをつなぐセットアップ
- 〈ART LM-EA7〉とミノルタオールドレンズをつないでみて感じた点あれこれ
- 〈TECHART LM-EA7〉とミノルタのオールドレンズ×α7III・試写概要
- 〈TECHART LM-EA7〉×〈MINOLTA New MD 24mm F2.8〉作例
- 〈TECHART LM-EA7〉×〈MINOLTA MD ROKKOR 45mm F2〉作例
- 〈TECHART LM-EA7〉×〈MINOLTA MC ROKKOR-PG 58mm F1.2〉作例
- 〈TECHART LM-EA7〉×〈MINOLTA MC ROKKOR-PF 55mm F1.7〉作例
- 〈TECHART LM-EA7〉×〈MC TELE ROKKOR-PF 100mm F2.5〉作例
- AFアダプター〈TECHART LM-EA7〉とミノルタのオールドレンズ×α7IIIで撮ってみたまとめ
〈TECHART LM-EA7〉とミノルタオールドレンズをつなぐセットアップ
元来本機はライカのMマウント用で、ミノルタのオールドレンズで本機を試す場合、〈TECHART LM-EA7〉本体のほかに、ミノルタMD・MCレンズのSRマウントから、ライカのMマウントへ変換するアダプタ〈KF-SRM2〉が必要です。この2機種ですが、取扱代理店の「焦点工房」さんのセット価格が割高に感じたため、それぞれを単独で購入し、割安で手に入れることができました。案外新古品が多く出回っているはずです。おそらくmenehuneが入手した個体は、「焦点工房」経由の品物ではないようで、マニュアルは中国語と英語のみ。ただ、いまの世の中、文字画像を翻訳できるアプリがあるので、さほど困りません。
2020年7月現在の最新のファームウェアはver6.0で、納品された品物も最新のFWでしたが、ひと通りファームウェアのアップデート手順をマニュアル通りやってみました。
iPhoneには、〈TA-GA3-swift〉がBluetoothを使用することを認めるか訊いてきます。なに? 〈TA-GA3-swift〉って。購入したのは〈LM-EA7〉ってモデルなんだけど。調べたら、ほかのマウント変換用のモデル名なんですね。こういうところは共有しているのでしょう。実際落としたアプリ名も、〈TECHART Update〉ではなく、〈TA-GA3-swift〉でした。
〈ART LM-EA7〉とミノルタオールドレンズをつないでみて感じた点あれこれ
本機の特長と注意点は概ね以下の通りです。
1)アダプターがマウントごとに用意されているので、他社レンズ→ライカMマウントアダプタを介して、MFレンズのAF化を実現。所有レンズで試したところ、ミノルタのオールドレンズ群、24mmF2.8、45mmF2、55mmF1.7、58mmF1.2、100mmF2.5での作動を確認しました。追っていくつか作例とインプレを上げますね。
2)ただし、メーカーの推奨レンズ重量は500gまでとされており、望遠系のレンズは使用できません。実際、ミノルタのMD200mm F2.8では駆動せず。ガラスの塊と称される〈58㎜ F1.2〉でギリギリ500gを切るくらいなので、このあたりが仕様限界かと。
3)アダプタのヘリコイドが前方に繰り出す形で合焦するため、結果として(前玉繰り出し方式の)MFレンズの最短撮影距離が短縮される結果となります。これは、以前ご紹介した、〈KIPON〉のマウントアダプタにおけるマクロ撮影機能と同じ原理ですが、彼機ほどは寄れません。せいぜいレンズ本来の最短撮影距離×70%くらいというのが使った印象です。
4)もともとのMFレンズのヘリコイド可動域が大きいレンズ、例えば今回なら〈MC TELE ROKKOR-PF 100mm F2.5〉などの場合、ピントリングの距離表示と実際の距離に隔たりがあると、AFは作動しません。MFである程度ピントを合わせ、その段階でシャッターボタンを半押しすると、AFが作動するという流れです。
5)実際の撮影時、絞りはレンズの絞りで調整します。これは一般のマウントアダプターと同じ。面倒に感じるのはカメラ側の絞り設定です。普通にαシステムのプロパーなレンズを使用した場合、カメラ側の絞り調整はレンズのスペックに依存します。開放絞りが2.8で最小絞りが22のレンズなら、カメラの絞り調整範囲もこれ以外調整できません。ただ、機構的に〈α7III〉はカメラ本体のF値はF2からF90まで設定できる仕様です。この機構を利用して、〈TECHART LM-EA7〉は、a)手振れ補正情報の提供 b)Exif(イグジフ)情報を発行 します。
☆設定方法は取説も公式サイトも説明が足りない。例えば「空(から)シャッター」ってどうやって切るの?と面食らう方も多いのではないでしょうか。以下手順です。
い)マウントアダプターと使いたいレンズをカメラに装着
ろ)カメラの電源を入れ、マニュアルにあるF値と使用レンズの近似値(50mmならF25)を設定 ※電源を入れたまま、カメラ側のF値を変えて空シャッターを切っても焦点距離は変更できません。
は)適当な対象物にカメラを向け、シャッター半押しで合焦(合焦しないとシャッターが切れない設定です)させ、シャッターを切ります。
に)プレビュー画面でDISP画面で切り替えてみると、マルC欄のところにレンズの焦点距離が反映されていることが確認できます。撮った画像は白い無駄ショットです。
ほ)撮影に入る前に、カメラ側の絞りをF2まで戻してやります。※レンズを交換する場合は、い)からもう一度。一度カメラの電源を切って再投入しないと、焦点距離は変更できません。
a)については、MFレンズでアダプタを介し撮影する際、カメラのメニューから焦点距離を選択することができるのと同じです。b)については、正直言って面倒です。Exif情報が記録されるといっても、レンズ名はダミー(DT40mm F2.8SAM)、シャッタースピードはまだしも、絞り値は、(当然)カメラ側の操作時の固定値F2のままで、レンズ側のそれは記憶かメモに頼る必要があります。手振れ補正のために設定はした方がいいですが、画像管理には役に立たないかもしれません。
6)あまり公にされてはいませんが、〈TECHART LM-EA7〉をカメラ本体に装着すると、駆動モーター部の出っ張りがカメラ本体の最下部からはみ出す形になります。〈α7III〉クラスだと、縦位置グリップを装着すれば見た目のバランスの悪さは解消されます。
同様に、雲台のブラケットの取り付けにも注意が必要になるでしょう。縦位置グリップを装着すれば雲台への装着は可能になります。また、所有するマンフロットの〈410〉雲台には、アタッチメントのネジが動かせるため、載せることは可能でした。水準器を犠牲(見えなくなる)にはしますが、これはカメラ依存でいいでしょう。
7)そもそも、〈TECHART〉というブランドは一体?とお思いの方。これは、中華人民共和国の広州にある、〈天工电子科技有限公司 Tiangong electronic technology co., LTD〉という、電子部品メーカーのようです。その一つが写真機器事業です。
〈TECHART LM-EA7〉とミノルタのオールドレンズ×α7III・試写概要
それでは試写の模様をお伝えしましょう。今後、このページに適宜レンズごとの作例を追加していきますね。実際の撮影ですが、マルチセレクターで、ピンを合わせたいポイントへカーソルを移動し、シャッターを半押しすると、そこが合焦する、といった流れです。AF-Cモードなので、動いている被写体に対し、追従しようとします。
先人の初期インプレで、中央以外は合焦しない、としたものがありましたが、それは恐らくファームウェアがver6.0にヴァージョンアップされる前のテストでしょうね。実際にインプレが掲載された日付を見ると、ver6.0にヴァージョンアップされた、2018年1月以前のものであることから推測できます。menehuneは入手した個体がすでにver6.0で、AF-C性能が向上されたものだったせいもあるのでしょう。概ね満足のいくものでした。ただ、これ以降2年ヴァージョンアップはなされていないので、モデル的にも円熟期なのかもしれません。それでは作例です。
〈TECHART LM-EA7〉×〈MINOLTA New MD 24mm F2.8〉作例
ISO320 1/3200秒 F2.8 風の強い日でしたが、アメリカフヨウは花芯にカーソルを合わせ、
アサガオは手前の合焦している花にカーソルを合わせ撮影しました。いい線いってると思います。ISO100 1/500秒 F4
路面電車は左に伸びたハンドルの丸い柄の部分を、
車内は手前の天井ランプにカーソルを合わせ撮影しました。〈MINOLTA New MD 24mm F2.8〉というレンズは、ピントリングのストロークが短いこともあり、マニュアルではピント合わせが難しいレンズという印象を購入時から抱いていましたが、AFアダプター〈TECHART LM-EA7〉を介することによって、レンズ資産として息を吹き返したなと感じました。
京急ミュージアムに展示されている〈デハ236〉車内です。
〈TECHART LM-EA7〉×〈MINOLTA MD ROKKOR 45mm F2〉作例
小型軽量 〈MD ROKKOR 45mm F2〉は、AFの動きもサクサクで、気持ちがいいです。横浜市電保存館近く、〈新華〉のタンメンはお勧め。
いずれも路面電車のハンドル持ち手の丸い部分に合焦させたものです。
特徴的な5角形のボケを次の撮影では再現してみましょう。
その五角形のボケを意識した作例。ISO800 1/500秒 F4
手前の八ッ山橋跨線橋にピントを合わせ、一番奥の三崎口駅方面を俯瞰。ジオラマはそのように作られています。
お散歩レンズとしてもってこいな〈MINOLTA MD ROKKOR45mmF2〉ですが、AF機能を付加されたらもう高価なEマウントレンズ不要論もわいてきそうな気もします。こういうことを中国のメーカーにやられてしまうと、国内メーカーはどう感じているのでしょうか。
ピン合わせに迷う条件ですが、マルチセレクターでカーソルを合わせれば、中央でなくとも合焦できます。操作性では5本のレンズの中で、〈MD ROKKOR 45mm F2〉が写りのバランス込みで抜きんでている印象です。ISO125 1/1600秒 F4
〈TECHART LM-EA7〉×〈MINOLTA MC ROKKOR-PG 58mm F1.2〉作例
やはり〈MC ROKKOR-PG 58mm F1.2〉といえば、このとろけるボケでしょうか。ISO800 1/100秒 F1.2
これはF4。 ISO800 1/30秒 F4
ISO800 1/800秒 F1.2
ほぼ中央、把手と書いた方がふさわしい感じで、いい空気感だと思います。
これはカーソルで圧力計の目盛「4」に合わせてみました。メタルフードと〈KF-SRM2〉アダプタを加えたら、優に500gを超えた状態です。そんなせいか、〈MC ROKKOR-PG 58mm F1.2〉を装着した〈LM-EA7〉の挙動は、若干おかしな点が見受けられました。つまりは容易には合焦しない、という症状です。でも、上げたようにしっかり写るケースもあるので、もっと試してみたいと思います。
京急川崎駅のジオラマ。車両の「1000」の字に合焦したつもり。点光源のボケが面白いですね。ISO400 1/2500秒 F1.2
JR根岸駅近くの中華〈三和〉のミニカレー。ISO800 1/80秒 F4
〈TECHART LM-EA7〉×〈MINOLTA MC ROKKOR-PF 55mm F1.7〉作例
JR鶴見線4番ホームはノスタルジー溢れる空間(ちょっと大袈裟)。
〈MC ROKKOR-PF 55mm F1.7〉は比較的軽量コンパクトなため、AFは小気味よく決まる印象です。鶴見駅西口〈満州園〉の餃子は区民食です(大袈裟)。ISO125 1/640秒 F1.7
みなとみらい地区に竣工した京浜急行電鉄本社に併設された〈京急ミュージアム〉にて。川崎大師の塔に合焦しています。ISO400 1/1000秒 F1.7
館内のジオラマはLEDの豆球が随所にちりばめられて、絞りボケの具合がよく表現できる環境ですね。ISO400 1/800秒 F1.7
〈TECHART LM-EA7〉×〈MC TELE ROKKOR-PF 100mm F2.5〉作例
JR鶴見線、安善駅近く。レールが交差する「X」にカーソルを合わせて撮影。〈58mm F1.2〉同様、合焦に迷うケースが結構あります。ある程度マニュアルでピンを追い込み、最終的にレリース半押しで合焦という操作の流れです。ISO125 1/1250秒 F2.5
また、合焦できる範囲が、広角・標準系と比べて狭いです。ただ、これはレンズの重量によるところが原因なのかそれ以外の原因があるのか不明です。中望遠のテーマはポートレート環境が構築できないと、探しづらいです。
〈MC TELE ROKKOR-PF 100mm F2.5〉ISO800 1/1250秒 F2.5 ラグビーボール型のボケが、
ISO800 1/800秒 F4 だんだんと六角形になっていきます。
ISO800 1/125秒 F8
ISO800 1/500秒 F4 羽田空港のジオラマは滑走路灯火を模したLEDが細かく光っているので、奇麗な画が撮れるかもしれません。
AFアダプター〈TECHART LM-EA7〉とミノルタのオールドレンズ×α7IIIで撮ってみたまとめ
2020年7月11日現在、手持ちの5本のレンズ(MD200mm F2.8は除く)のうち、3本の試写を終えてみて、悪い気はしないです。むしろ結果に驚いています。ピント合わせの難しかった〈MD24mm F2.8〉の再評価につながりましたし、〈45mm F2〉の携行性と〈58mm F1.2〉の写りの良さも再確認できました。これもピント合わせという初老のカメラ少年には厳しい関門をクリアしてくれる〈LM-EA7〉のおかげ、と言わざるを得ないでしょう。本機はカメラのバッテリーから給電を受けていますが、80枚程度の撮影なら90%を割り込むことすらなかったです。
カメラ本体はSONYのEマウントに限定されますが、レンズ側の選択肢はアダプターを介して各社レンズの選択が可能です。特に目がしょぼしょぼしてピント合わせがきつくなってきた中年男子・女子にはおススメできるガジェットかもしれません。