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蕎麦屋のカレーは本当に美味しい?人気店のカレーを試したけれど、こっちの方が美味しいよ。


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そば処根岸鶴岡のカレーライス

そば処根岸〈鶴岡〉のカレーライス

「蕎麦屋のカレーはおいしい」とはよく巷でいわれていることです。そこで「蕎麦屋のカレー 美味しい」でネット検索をしてみると、高い確率でヒットするのが、日本橋にお店を構える立ち食いそば〈そばよし〉です。出汁香る黄色いルーのカレーは、蕎麦屋カレーの王道ですとか、タレントがお忍びで来店するとか、鰹節卸店が営む蕎麦屋だからこそできた味、とかですね。

かく言うmenehuneも、蕎麦屋でカレーは食べる方です。そりゃあ、蕎麦屋のカレー年間150店回ったとか、そんなのは無理ですけれど、横浜・川崎の「蕎麦屋のカレー」はそこそこ食べてきた自負があります。その結果感じたことは「蕎麦屋のカレーって、言うほどうまいか?」でした。そこでこの疑問を晴らすため、業界のメルクマールと言われる立ち食いそば〈そばよし〉のカレーを試食しその味を確認したうえで、menehuneが知っている、このカレーと比肩しうる蕎麦屋のカレーをご紹介しようという企画です。※価格はすべて2021年6月現在のものです

    

 

1)カレーを蕎麦屋で提供することになったのはなぜ? 


そもそも、洋食であったカレーを蕎麦と併せて提供するようになったのはいつごろからなのでしょうか。業務用カレールーを製造販売する〈杉本商店〉のウェブサイトにこのあたりの経緯は詳しいです。

www.sugimoto-shop.com

石川町〈木の芽〉のカレー丼

石川町〈木の芽〉のカレー丼


1859年、江戸末期に開港した横浜港でイギリス船からもたらされたといわれるカレー。当時インドを植民地として支配していた英国ではインドから持ち込んだ香辛料と小麦粉をブレンドしたとろみのある欧州カレーが既に存在しており、高級西洋料理として明治時代から日本国内で提供され始めます。〈杉本商店〉公式サイトによると、杉本商店の前身である〈田中屋杉本商店〉が英国から入ってきたカレー粉を業務用食品として販売できないか模索する中、従来からあった「鴨南蛮そば」の出汁に英国産のカレー粉「C&B CYRRIE POWDER」をブレンドし、客に提供する蕎麦屋が現れはじめたそうです。これが明治時代後半のことです。

1903年(明治36年)には国産初のカレー粉を大阪のメーカー〈大和屋〉の今村弥兵衛が開発。1905年(明治38年)から販売しています。〈大和屋〉は〈今村弥〉現代の〈ハチ食品(Hachi)〉へと屋号を変え連綿と受け継がれています。「Hachi」ブランドのレトルト食品は店頭でよく見かけますが、こんな歴史があったんですね。でも、エスビー食品の公式サイトを見ると、日本初のカレー粉の発売は、1923年エスビー食品が初、とあるんですよね。どっちの主張が正しいということではないようなので、興味のある方はネットで調べれば答えは出てきますよ。

日本橋〈そばよし〉のカレー

日本橋〈そばよし〉のカレーライス


味にこだわるトンカツ屋がカツカレーを置かないのと同じで、カレーの香りが店舗の雰囲気をダメにする、食器に色が残るなど出汁の香りを尊重する老舗蕎麦店からは受け入れてもらえませんでした。しかし、明治から大正にかけて蕎麦出汁で作るカレー南蛮や、カレーライスが徐々に普及していきます。日本の伝統食である米との親和性が高く、初めは英国式のスパイスと小麦粉を調合したルーでしたが、明治後半には鰹節出汁や醤油をブレンドするレシピが登場し、より市井の人々に浸透していきました。


本牧〈富士美〉のカレーライス

本牧〈富士美〉のカレーライス


蕎麦屋でカレーライスが普及したきっかけの一つとして1923年(大正12年)に発生した「関東大震災」を挙げる説もあります。壊滅的被害を被った蕎麦屋は業態変換をせざるを得なくなり、座敷に上がるスタイルだった客席は椅子席で造作し直され、建物の新築に伴い提供されるメニューも一新が図られたといいます。この転換点が蕎麦屋が丼物(どんぶりもの)やカレーライスを提供するきっかけになったというのです。因みに1923年には東京は浅草で〈日賀志屋(のちのエスビー食品)〉がカレー粉の製造販売を開始しています。

 

川崎〈たまるや〉のカレーライス

川崎〈たまるや〉のカレーライス


 昭和に入ると、食文化は大きく変わり始め、蕎麦屋のメニューにはカレー南蛮が定着します。日本全国の食品メーカーが相ついでカレー粉の製造販売に乗り出し、カレー粉ラッシュが興りますが、第二次世界大戦に突入すると戦時統制により、軍用以外のカレー粉は製造されなくなりました。そして終戦の年、1945年11月には愛知県のメーカー〈オリエンタル〉が製造を再開しました。その後カレールーは粉末から固形、さらに板チョコ状の使い勝手の良いものへと変遷し、現代の国民食的地位まで上り詰めたわけです。

因みにカレーそばの元祖、で調べてみると、東京を主張する記事や、神戸を主張するお店があります。カレーうどんですと、これも東京、大阪、いや名古屋だと主張は分かれるようです。しかしそれ自体にあまり意味はなく、現在口にすることができる味がすべてなわけですから、その基準で自分の好みの味を探し、または料理するしかありません。

2)蕎麦屋のカレー人気店〈そばよし〉で基準のカレーを食す

そばよし神谷町店この記事を書くにあたり、まずは人気店と言われる〈そばよし〉に行って、基準の味を確かめてみました。訪問したのは日本橋本店と神谷町店。それぞれの印象を簡単にまとめておきます。ただし、カレーの味については経営者が都内3店舗分のルーをまとめて仕込むと、あるネット記事にあるので店舗ごとの差異はないでしょう。

共通しているのは、a)券売機で購入したチケットを調理カウンターへ渡し半券を受け取る  b)客席で待機  c)半券の番号を呼ばれるので半券と引き換えに料理を受け取るというシステムと、カレーの付け合わせは福神漬けと紅生姜のいずれからセルフでトッピングするという点です。

そばよし日本橋本店まずは〈そばよし〉日本橋本店。2001年に開業した本店は、日本橋三越の本店から昭和通りに抜ける路地を出た場所にあります。佇まいは古く、店内は率直に言って狭いです。アクリル板も一部設置されています。昭和通りを渡ると日本橋蛎殻町で、昔よく通ったお得意さんがいました。

そばよし日本橋本店〈そばよし〉日本橋本店には立ち食いスペースは無くて、カウンターで着席していただけるようになっています。しかし、お店の印象としてはその狭さがマイナスイメージに繋がってしまいますね。

そばよし日本橋本店〈そばよし〉のカレーセット620円。ミニカレー丼とかけそばです。かけそばは出汁が効いていおり、関東風しょうゆベースの濃い色のつゆです。細切りの蕎麦は啜りやすく美味しいですね。

そばよし神谷町店一方こちらは〈そばよし〉神谷町店です。2016年開業です。menehuneの記憶だと、ここは以前別の立ち食い蕎麦屋がありました。恐らく居抜きで開業したのでしょう。神谷町の交差点から芝方面へ下ってすぐの場所です。

そばよし神谷町店物件が新しく開業も近年なので、〈そばよし〉神谷町店の店内は明るく適度な広さで、日本橋店で感じたような閉塞感はありません。

そばよし神谷町店〈そばよし〉神谷町店の店内はすべてカウンター席でテーブル席はありません。通路の両側がカウンター席となっており、その間は空間に余裕が感じられます。スツールに腰掛けていただけます。立ち食いスペースはありません。

そばよし神谷町店〈そばよし〉神谷町店のカレーセット620円。ここではミニカレー丼と冷たいかけそばをチョイスしました。もり、かけ(温/冷)の3種から選べるそうです。冷たいかけそばはめんつゆのパンチが強く濃いです。もう少し薄味でもいいかなと感じます。そばは細く冷たく締まっていて、若干啜るのに難儀しましたが悪くないです。

そばよしのカレーさあ、そして肝心の、業界のメルクマールとして知られる〈そばよし〉のカレーライスです。先に書いたとおり、セントラルキッチンでまとめて仕込んでいるのだから味に変わりはないでしょう。日本橋店と神谷町店でいただいてみて、実際変わりはありませんでした。マスタード・イエローのルーは刺激的な辛さはほとんどなく、適度な粘り気でライスになじみます。豚肉、玉ねぎの具は少なめで、少し口さみしいですね。そして脂身というかラードというか、けっこうな脂味(あぶらみ)を感じます。これはどこかで感じた味だなと。すぐに思い出しました。この〈そばよし〉のカレーライスに近いイメージのカレーは、〈同発〉のカレーです。

www.menehunephoto.net

 

 

3)意外?〈そばよし〉のカレーは〈同発本館〉のカレーと似ている

横浜中華街〈同発本館〉のパイコーカレー

横浜中華街〈同発本館〉のパイコーカレー



menehuneが思い出した日本橋〈そばよし〉のカレーに近いイメージのカレーライス。それは横浜中華街の〈同発本館〉のランチでいただいた裏メニューのカレーライスでした。そのときの様子は別途記事にしていますので興味のある方は参考にしてください。ただ、近いと書きましたが〈同発本館〉のカレーはとても脂っぽくて、さらに結構スパイシーなので汗が噴き出ます。〈そばよし〉のカレーの脂っこさをさらに上回るものです。これに比べたら〈そばよし〉のカレーはあっさりした脂っぽさで、かつ良くも悪くもスパイシーではないので、書いてみたものの、ほぼ似て非なるものですね。

話を戻して、〈そばよし〉のカレーですが、「蕎麦屋のカレー」のメルクマールとしてある程度期待していた出汁の要素はイメージしていたほど感じません。確かに〈そばよし〉のカレーの味はまろやかで食べやすいのですが、それだけです。ミニカレー丼だからというわけではないでしょう。カレーライス単品(450円)でもこの印象は変わらないでしょう。要約すれば「辛くないまろやかな食べやすいカレー」です。menehuneは〈タンタンメン本舗〉でタンタンメンの辛さを「普通」で頼むパーソナリティですが、そのmenehuneをもってしても、もっと辛くていいし、具も実感したいところです。これが巷で喧伝されている「蕎麦屋のカレー」の標準点なのか。日本橋〈そばよし〉のカレー。その印象は少し拍子抜けしたものでした。

 

4)蕎麦屋のカレー、こっちの方がおいしいよと感じたカレー紹介

 

川崎市幸区〈たまるや〉のカレー

川崎市幸区〈たまるや〉のカレー



ここまで書いてきましたが、最初に表明したとおりmenehuneは世に数多ある「蕎麦屋のカレー」すべてを食べ歩いてきたわけではありません。さも知っているかのように語るつもりもないのですが、実際に食べ歩いても正直言って「蕎麦屋のカレーは美味しい」と巷で言われるほど、実際にこれは美味いと思わせるカレーを提供するお店はそうはないものです。と言わざるをえません。

そんな中、最近いただいた「蕎麦屋のカレー」で感激したお店を紹介してひとまず終わりにします。それは川崎の〈たまる屋〉です。カレーライスは600円、辛さは抑えめだが物足りないほどではないパンチを残していて食べやすく、程よいコクを与えられたルーはご飯が進みます。付け合わせは〈そばよし〉同様紅ショウガです。具の豚バラ肉も噛むたびに肉の旨味があふれるミディアムレア感を残した柔らかさで、小ぶりながら十分目視できる玉ねぎもシャキシャキ感を残す食べ応えがいいです。

蕎麦屋〈たまるや〉のカツカレー

川崎市幸区〈たまるや〉のカツカレー


川崎〈たまるや〉のカツカレーライスは750円。カツを揚げる油の質か、menehuneの胃袋の具合か、カツの衣の油がくどく感じることもありますが、これで750円ならコスパは悪くありません。

〈たまるや〉の方に話を伺うと、業務用のカレー粉(一応秘密・エスビーではないそうだ)に自家製鶏ガラスープをブレンドし、オーダーを受けてからその都度作っているそうです。作り置きでないから豚肉も玉ねぎも新鮮な味わいが残されているのですね。ここは煮込んでカレーの味しかしなくなった具材とは大きく異なる美点です。そしてなんと、そばつゆに用いる出汁はカレールーにブレンドしていないというのです。出汁香る蕎麦屋のカレーとは何だっとのか?完全に目から鱗です。


 

5) 蕎麦屋のカレーは美味しい? まとめ

 

川崎〈たまるや〉外観

川崎〈たまるや〉外観


まずもって先入観だったのは、「蕎麦屋のカレー」にはそばつゆで用いる出汁が必ず含まれているという点。これが蕎麦屋のカレーが日本人の口に合う、美味いといわれる所以だと信じていたわけですが、どうも世の中そうでもないらしいです。川崎の〈たまるや〉はひとつの例に過ぎず、恐らく、いや絶対にmenehuneが知らない、出汁を使わない「蕎麦屋のカレー」を創造し高い評価を受けているお蕎麦屋さんはあるのでしょう。

ただそれらのカレーを追いかけるのは先達に譲るとして、menehuneの身近で遭遇したおいしい蕎麦屋のカレーを紹介する機会がまたあればいいでしょう。それではいったんここまでといたします。

 


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