menehune旅写真プラス

menehuneの写真旅の記録。お気に入りの映画、書籍とアニメのインプレ、ライフハックもたまに更新。


スポンサーリンク

【追記あり】映画『天気の子』を観た。聖地巡礼もちょっとだけ追記。


スポンサーリンク

『天気の子』イメージ

(C) 2019「天気の子」製作委員会


京アニはんの事件は追って書こうと思いますが、本作、『天気の子』で気づいた点を一つだけネタバレです。京アニを退社されたんですね。植野千世子はんが作画スタッフにクレジットされています。どうりで、それっぽい絵面があった訳です。

Yahoo!映画の公開前のネガキャンレビューは全て削除されていますね。初回上映後に書かれたレビューにもネガティブな書き込みと、それに呼応する「やらせ参考になった」ポストがあるようですが、menehuneの初回を観た率直な感想は、『君の名は。』を超えたな、というものです。

午後もう一回見て、自宅でネタバレギリギリで続きを書きます。
2019/7/21大幅追記しました。

 公開初日、あさ9時の全国一斉公開を観た。ブルク13のIMAXはそれでも8割程度の入り。昨日の京アニはんの痛ましい事件が影を落としているのか、平日とはいえ、満席を覚悟していた割りには、若干の肩透かしを食らった感じ。ブルク13のIMAXシアター7は最前列がD列でDーF列の前3列はドリンクホルダが両サイドにありません。つまり隣の観客との距離が近いです。また、スクリーンに近すぎて銀幕の細かい横縞(走査線のようなもの)が見えてしまいます。よって、G列以降をお勧めします。
※これはあの劇場の通路を挟んだ前席列の仕様ですね。



※そろそろネタバレ込みで追記しておきます。これから鑑賞予定の方はご注意ください。


パンフレット(800円)のコメントで、新海監督は次のように語っています。

「やりたかったのは、少年が自分自身で狂った世界を選択する話。別の言い方をすれば、調和を取り戻す物語はやめようと思ったんです 」



6ページに及ぶ、この監督の独白は一読の価値がありますよ。
監督もこの中で語っていますが、

「どうしても前作、『君の名は。』を意識して制作せざるを得ない。観客はわがままだから、『君の名は。』のようなものを観たがり、本当に似たものだときっと文句を言う(笑)」



今ここでご紹介した、監督によるコメントの2つのセンテンスでお分かりいただけると思いますが、本作『天気の子』は少し変わった方向へ向けて、物語を収束させる舵を切っていきます。しかし、不思議と違和感を覚えません。
公式サイトは意図的なのか不親切なのか、キャラクター紹介のページがありませんが、家出をしてきた主人公の少年〈帆高〉を、東京で預かる〈須賀〉というキャラクターのエンディング近くの「ある台詞」が監督の意思を裏打ちしています。これも前述した京アニはんの事件を連想させる、とても悲しく苦しい言葉です。

実は前日の事件を受け、ろくに眠れませんでした。観るのやめとこうかな、とも思いましたが、結局、今日2回観ました。しかし、当事者でもないのに失礼な物言いですが、あのような出来事を乗り越える、いいものを観させてもらった、というのが正直なところです。

ネタバレにならない程度の雑感を書きますね。

*前作、『君の名は。』と比べて、エンディングに向かうまでのストーリーが単純明快です。これは本作最高の美点でしょう。

*相変わらず、物語展開を補足説明するかのようなRADWINPS(一部feat.三浦透子)の劇中歌は、『君の名は。』同様、ちょっとくどい。

*『君の名は。』で〈宮水三葉〉とダブルヒロインだった〈奥寺ミキ CV:長澤まさみ〉のポジションとして、本作『天気の子』にも、〈天野陽菜 CV:森 七菜〉と〈夏見 CV:本田 翼〉がキャスティングされています。公開前、本田はんの台詞回しに難癖をつける投稿をネットで散見しましたが、2回鑑賞して、これはこれで全然ありだな、と感じましたよ。

*このダブルヒロイン、劇中では揃ってタンクトップにパーカーみたいないでたちなんですが、物語の後半、好事家を満足させる、ある変身をします。お楽しみに。

*カップルが観に行っても若い男女グループがそれぞれ観に行っても、健全なお色気、とちょっと嬉しいお色気を楽しみ、健全な社会勉強ができますよ。前作のような露骨な下着露出はありません(ネタバレしちゃった)。これなら、フェミねーさんらも怒らんて。

*前作、『君の名は。』で、前々作『言の葉の庭』で教師役だった〈雪野先生〉を再登場させたドッキリを、本作、『天気の子』でもやっちゃってます。これはとても驚きました。そのうちネタバレされちゃうんだろうけど、鑑賞する際の楽しみにしてください。エンドロールを観て二度驚き、パンフレットを買いさらに驚き、劇中のカメオ出演シーンを探す羽目になります(犬はどうでもいい!)。

*主人公の少年〈森島帆高〉と少女〈天野陽菜〉そして、陽菜の弟〈凪〉の3人が、ホテルで枕投げをするシーンがありますが、まんま京アニはんの某作品の修学旅行回と同じ動きです。

【ここから追記パートです】

なんだ、これって、J・D・サリンジャーの『The Catcher in the Rye(キャッチャー・イン・ザ・ライ=邦題:ライ麦畑でつかまえて)』じゃないですか!
簡単なネタばらしです。漫喫のカップうどんの重しのあれ。
野崎 孝はん訳ではなく、村上春樹はん訳ヴァージョンですね。
主人公の〈ホールデン〉は16歳の家出少年(実際は退学処分)。社会との軋轢を経て、妹の〈フィービー〉との邂逅で物語は終わります。実際は年下だった彼女というのは、本作と完全にクロスします。
ああ、ネタバレしちゃった。

世界を変えてしまった、と主人公の少年〈帆高〉は思っていて、劇中、確かに因果関係はその通りなんだけれど、その行為が完全犯罪(例えです)になるための伏線があらかじめばらまかれているのは、お気づきのはずです。
ひとつは、〈天気神社の神主〉が観測史上初なんていうのは云々、と明確に説明していますし、〈立花冨美〉も江戸時代の水景色を語っています。屋上に消えた〈帆高〉を、外階段が抜けたため、別ルートからアプローチした屋上で、警察は発見できない。しかしそこからさほどの時間は経っていないと思われたその時、空が破れたかのような豪雨が関係者に注ぐ。その刹那、彼と彼女の関係に気づいた可能性はないとは言えないでしょう。しかし、この時点ですでに証明の機会は失われてしまった。この気象現象が、全世界で地球規模で発生しているのか、劇中明らかにはされないが、物語世界ではヒトはそれでも順応して日常を生きていくのです。なぜなら、世界は元々狂っているからです。これが「調和を取り戻すことを止めた」と発言した意味ですね。
menehuneが違和感を覚えなかった、と先に書いたのは、調和は取り戻してはいないけれど、バッドエンドじゃないからだと思います。〈帆高〉と〈陽菜〉の恋路は成就したのですから、彼が言うとおり、天気がいくら狂っても、そんなの関係ないんです。
と書いてはみましたが、この作品、『天気の子』では、過去はともかく、劇中ヒトは死にませんからね。よく練られていると思います。これも完全犯罪(例えです)に一役買っています。

新海監督は、パンフレットの中でこうも語っています。


「映画、特に東宝の夏休み映画、さまざまなメディアや観客を巻き込んで行うお祭りのようなもの。(中略)仮に『天気の子』が、僕が以前作っていたような単館系で興行される映画であれば、設定は同じでも違うストーリーしたと思います。作品の優劣とは関係なく、興業のされ方によっても作るべき作品というのは変わってくるんだというのが、『君の名は。』で僕が得た実感です。たくさんの方が同時期に体験する、ある種のお祭りとして、皆さんにぶつけるべき作品。それが『天気の子』という映画を今自分が手がける意味だと思っています」


最近こけ気味の夏休み監督に聞かせてあげたい言葉ですね。とは言っても、『カメラを止めるな!』という例もなくはないので、あまり大衆に迎合するのも、アーティストとしてどうだろうとも思います。そもそも、ぶつけた結果、その作品がヒットするかどうかは、だれにも予測できないですからね。
これ以外にも、新海監督は、「いま現在、俺たちの時代が来ている気がする」とか、『君の名は。』を制作した際、これは売れる、と感じたとか、結構強気な発言もされています。成功したものだけが許されることですね。

簡単に言って、サルでもわかるストーリーにしないと、夏休み映画を観に来る大衆には刺さりませんからね、と表明しているに等しいです。そういう心根で制作しているわけですから、往年の過去作のようなNTR系や、バッドエンドな作品になるはずがありません。それを嘆くヲタクがいたとしても、顧みられることはないでしょう。

枕投げについては、新聞のインタビューで新海監督が白状しましたね。「『けいおん!』大好き」だそうです。今回の京アニはんの事件があってもなくても、ここは言及される予定が組まれていたと思います。

植野千世子はんについては、if の話で顰蹙を買うことを覚悟で書いておきますが、ご無事で何よりです。ブティックホテルの広めのベッド上でのシーン。なにげに〈陽菜〉の腰から尻にかけてのバスローブのラインが堪らないわけですが、髪を下した〈陽菜〉そのものが、もっと堪らんわけです。ここ一連、恐らく彼女が作画に絡んだ場面であると思います。

また、先にサルでもわかると書きましたが、『君の名は。』が、並行世界の行ったり来たりを繰り返す見せ方をした結果、リピーターを生んだという側面が『天気の子』を鑑賞すると見えてきますね。ここは少しだけ問題かもしれません。物語が明快過ぎて、一度見たら十分だし、これも監督がパンフレットで語っていますが、3年前と比して、いまの若者は金回りが悪化している、かもしれないからです。

これも先に書いた、「健全な社会勉強」に繋がるのですが、出自の関係はないにしても、新海監督は、カメラワークなどを駆使した、破廉恥にならない程度のエロ演出が上手いと思います。泣かせ演出も。でも、ここが難しいんですが、笑わせようと狙ってくるパートは結構滑る気がします。

ビル屋上の鳥居の形状がちょっと不思議、あまり見ないものです。

鳥居(とりい)とは、神社などにおいて神域と人間が住む俗界を区画するもの(結界)であり、神域への入口を示すもの。一種の「門」である。 (出典:ウィキペディア)


『天気の子』に登場する鳥居は、貫(ぬき)が柱を貫通していない「神明型」(しんめいがた)と、〈転び〉という柱が内向きに傾く特長の「明神型」(みょうじんがた)の二つが混ざった形状です。
「神明型」の形は、歴代天皇陵の鳥居をはじめ、伊勢鳥居、靖国鳥居などに見られます。一方、「明神型」の多くは、一般の神社に建てられています。

「此岸(しがん)」という言葉は、直接劇中には出てきませんが、この神域と人間が住む俗界を区別する言葉として、此岸と彼岸というワードがあります。「彼岸」は出てきますね。
此岸(しがん)とは、こちらの岸と書く通り、仏教の考え方で、彼岸(ひがん=向こうの岸)の反対側の世界のこと。つまり、私たちが生活をしている、現世のことを指す言葉です。
また劇中、お盆の儀式を執り行う場面があります。お盆は全国的に8月15日を中心に行われますが、東京や関東圏の一部では7月15日を中心に行われます。なぜ1か月早く行われているのでしょうか。これは当時の明治政府が行った改暦(太陰暦から太陽暦への切り替え)によるものだそうですが、ここでは詳細は省きます。
立花家と天野家は、ともに新盆(にいぼん)を迎えていて、瀧(言っちゃった)が起こした、迎え火を3回跨ぐことで「病気から身を守ることができる」と考えられてきたそうです。
あれは〈瀧〉のお父さんの実家、という解釈でいいんでしょうね。つまり〈立花 瀧〉の父親の父親、おじいさんが亡くなったんです。
迎え火というのは、戻ってくる先祖の霊が迷わないように、目印として火を焚くお盆の風習です。

だから、〈陽菜〉は戻ってこれたんですよ(適当)

〈陽菜〉の母親が、その手の血筋だとしたらどうでしょう。
前作、『君の名は。』の宮水家同様、天野家がその血筋だとしたら、どうでしょう。
劇中、〈陽菜〉の母親の手首にあるものは何でしょう。
案外、いい線いってるんじゃないですか。

なお、本作『天気の子』の英題、『WEATHERING WITH YOU』ですが、様々な解釈があると思います。名詞としての「WEATHER」は、「天気」という意味はあるとして、動詞として、「(困難を)乗り越える」という意味もあるそうです。ただ、「WEATHERING」という意味で解釈してみると、若干異なる意味合いを持ってきます。模型製作における「汚し塗装」を経験された方なら、「ウェザリング」という意味の解釈も異なってきます。経年や実戦を経た模型たちに傷をつけ、汚れ塗装をすることで、模型としての「風合い」を演出するのですね。
では、本作の主な舞台はどこだったでしょうか。
廃墟化した雑居ビル。まさに、風雨に晒され「朽ちていく」という意味を「WEATHERING」という言葉は持っています。つまり、
「様々な困難を乗り越え、それでも僕は、君と朽ちていきたい」という意味が与えられていると感じます。それこそが、主人公が選択した路なのかなと。




この夏、もう何度か観て、気づいた点を書こうと思います。

【追記ここまで】


*公式サイトに以下の文言が掲載されましたね。

映画『天気の子』関連場所訪問(聖地巡礼)についてのお願い

拝啓 平素より格別のご愛顧をいただき、厚く御礼申し上げます。
映画『天気の子』の本編中に登場する、または関連のある場所への訪問を予定されている皆様におかれましては、近隣住人の方々への配慮、及び節度のある行動、マナーに十分心掛けていただきますよう
お願い申し上げます。

 

代々木会館これは、その筋の方ならすぐわかるんですが、JR代々木駅前にある「代々木会館」という実在する廃墟ビルです。若い方はご存じないだろうけど、ショーケンのドラマ『傷だらけの天使』のロケ地でもあります。少し前までは現役だったのですが、現在は取り壊しを待つ状態で入れないようです。屋上へつながる外階段は、実際はありません。また、このビルの屋上に鳥居と祠はありません。代々木駅のNTTドコモ代々木ビル側から確認できます。

代々木会館解体工事のお知らせ

2019年8月から解体工事が始まるようです。近いうち養生されて表から見えなくなってしまうでしょう。

JR代々木駅ホーム

また、JR代々木駅のホームは、すべて目隠しがされており、上のビルはおろか、何も見ることができません。

JR田端駅南口

劇中登場する、JR田端駅南口です。

田端駅前の、帆高と陽菜が出会う場所

劇中、〈帆高〉と〈陽菜〉が出会う場所ですね。劇中にも出てくる、「あみ印」の看板ですが、1952年創業の「あみ印食品工業株式会社」という主に業務用の調味料の製造販売を行う会社はんです。

JR田端駅南口から続く路地

JR田端駅南口から〈陽菜〉のアパートへ続く路地ですね。この先、〈陽菜〉が祈りをささげるあたりにはホテルが建設中でした。巡礼的には邪魔です。少し拍子抜けですね。また、一部ネットで、〈陽菜〉のアパートのモデルとなった物件を掲載していますが、実モデルはないと思うので、探索はほどほどにされたほうがよろしいかと。
menehuneも巡礼はこの程度を一度行けば十分です。

というわけで、公開初日で書けることはこのくらいでしょうか。
映画『天気の子』、この夏休み、おススメです。


スポンサーリンク