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映画『ゴジラ-1.0』を観た。


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映画『ゴジラ-1.0』を観た。Amazonプライム会員なので、2024年5月3日から配信が始まった本作を観ることができた。公開直後から漏れ伝わる断片的な情報を見聞きするにつけ、これは観たいなと思わせる作品でした。本家アカデミー賞で視覚効果賞を受賞したこともあり、この大型連休で唯一の楽しみといっても過言ではなかった。

いざ鑑賞。特段の感想なし。つまらなかったかと言えばそうでもないけれど、面白いとかワクワクするとか、上がる!といった印象も抱かなかったというのが率直な感想だ。そもそもなぜ本作『ゴジラ-1.0』をmenehuneが観たいと思うに至ったのかと言えば、それは幻の旧日本帝国陸海軍の兵器がゴジラに立ち向かう、という情報が公開後もたらされたからであり、「この設定を立案したスタッフ、天才」と思ったものです。第二次大戦終了後の国際状況は米ソの対立であり、ソ連を刺激したくない米国の判断りより、ゴジラ出現に際して日本政府は米国の支援を一切受けられない。では軍隊(自衛手段)を持たない日本はどうゴジラと対峙するのか?なんと、旧日本海軍の重巡洋艦〈高雄〉、旧日本陸軍が本土決戦のために温存したとされる幻の重戦車〈四式中戦車〉、そしてテスト飛行のみで終戦を迎えた幻の高速戦闘機〈震電〉がこれらを担うというではないか。本当にこの情報を耳にしたときは、「設定の天才」と思い、その手があったか、と感じたものです。

最近は「もしトラ」などという言葉がニュースなどでもてはやされていますが、この「if戦記」という単語に弱い特定の年代が存在します。おおよそ60歳前後の男性ですね。1980年代にはやった「架空戦記」コンテンツを読み漁りアニメ化されたそれにはまった世代です。背景には「あの兵器が完成、生産されていれば戦況は好転した。突き詰めれば日本は戦争に勝てた」というものでしょう。「if戦記」ですから、それはもう「もし日本がミッドウェイ海戦で勝利していたら」「もし山本長官が戦死していなかったら」「もし〈震電〉の実戦配備が順調に進んでいたら」「もし〈三式戦車〉や〈四式戦車〉が量産されていたら」といった具合です。公開がほぼ終了しBDソフトがリリースされた今日日、観客の世代分布が気になりますが、この層に本作が刺さったのだとしたら、そういう理由によるところが大きいのではないでしょうか。因みに「もしトラ」って語源があるの知ってますか?メディアの誰もがその情報に触れていないようなので書いておきますが、2009年に刊行された単行本、岩崎夏海さん著『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』のタイトルが長すぎて『もしドラ』と略されたのがそのルーツです。この作品はNHKで2011年にアニメ化もされ、その際この略語が定着したようですね。

 

にしてもです。鑑賞後の感想はほぼ何もないですね。いくつか気になった点を挙げると、

  • 日本政府(のゴジラへの対応)がまったく描かれていない。政府とのパイプ役として吉岡秀隆演じるキャラクターが描かれている程度です。元海軍将校だった人物も登場ますが、立場はすべて民間人として描かれています。下手に政府高官とか政治家を描くと庵野監督の作品みたいになっちゃうので敢えて省略したのかもしれませんが。
  • 幻の兵器は登場するけれど、さほどの活躍はしません。ここは「if戦記」にはまった人たちにとって物足りない点かもしれません。完膚なきまでにとは言わないけれど、もう少しゴジラに対して有効打が欲しかったところです。それとメカニカルなコンテが足りない。資料がないとしても、〈四式中戦車〉の戦車砲を装填するカットとか、〈震電〉のコックピット周りの描写とかですね。特殊視覚賞をとったとは言っても、〈高雄〉の船体をもう少し舐めるように描写しても誰も文句は言わないはずだし、もっとシズル感のある画になったはずです。
  • 結局誰も死なないし、登場人物みんな良いヒト。もう今更ネタバレでもないでしょうから書いちゃいますが、冒頭の大戦中シーンを除き、メインで登場するキャストは誰も命を落としません。良くも悪くも予定調和だし、話の筋は読めちゃいます。ここで〈高雄〉来るな、とか、ここで見習い水夫の山田裕貴来るな、とかです。誰かが犠牲になって死ねというつもりはありませんが、ここまでどれだけ多くの犠牲のもとに成り立っているんだ、この国は、という思想が根っこにあるなら、それもありでしょう。
  • にしてもこの出来事って相変わらず関東だけが舞台で、それ以外の日本人ってなにしてんの?とはなる。特に『平成ガメラシリーズ』が日本各地を舞台にしていたのとは対比的です。これは『シン・ゴジラ』でも同じ構図。

 

本作『ゴジラ-1.0』は冒頭書いた通り、そのアイディアだけならパーフェクトといってもいいが、オタク的な満足感を観る者に与えきれなかった点と、舵を切った先の人間ドラマが緩慢すぎて冒頭のような鑑賞感と相成りました。

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