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映画「バケモノの子」を観た。


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映画「バケモノの子」を観た。

※ネタバレ若干あります。




まず、これは子供が観ても判らない作品です。

主人公の男の子が師匠のバケモノの「武闘」における所作(ステップ=足運び)を徹底的に真似るあたりの描写は単純な反復なので、子供にもわかりやすく、ここでは場内で笑いが起きていた。

しかし、前作、「おおかみこども」が母親とその子供との関係を描いたのに対し、本作では父親と子供の関係性を見せられるので、せいぜい共感できても小学高学年から中学生辺りからであろう。それ以下の子供は、本作がそもそも、なにを伝えたいのかが判らないと。
ジブリ的なキャラ造形による面白味もないため、どんどんシリアスな展開となる後半は、椅子を立って遊び回る子までいたくらいだ。

そもそも、いい歳をした男性なら理解できるだろうが、日本の大半の男性は父親と付き合うのが苦手だ(ひょっとしたら女性もそうかもしれない)。大方の男性は母親をクッション、バッファにして父親と向き合うのが当たり前ではなかろうか。
そう、世の「お父さん」というものは、自らがこしらえた子供たちから疎まれる宿命を背負っているのかもしれない。

然るに、本作のクライマックスで、師匠が弟子に対してとる行動は、子供からしてみたらまさに「クレイジーであり、その反応は観客の年齢が上がれば上がるほど正比例することは間違いないのではないかと思うのだ。

しかも、主人公にはそうすること以外の選択肢がないのである。これはあまりにも親側の身勝手である。

だってそうではないか。
あの状態、師匠(育ての親)と精神的な意思疎通が図れることで、「蓮」は「楓」と近い将来、エッチしてるのを監視されているのに等しい状況となるのが目に見えているではないか。

「父性の押し売りはやめてくれ!」と感じた観客は私だけではあるまいて。

細田監督の作品とは、元来、私の相性は良くないようで、「時かけ」「SW」「おおかみこども」とも、私は好きではない。
だから、配給の宣伝に上手く乗せられてやり、「ダメならこき下ろす」つもりで今回鑑賞した。

正直、途中まではイイ。主人公と「渋天街」の連中との関わりや、楓との出会いと、関係を育む辺りはむしろ、好きだ。
楓役の広瀬すずは、「海街」以外の連想要素がなかったため、新鮮な演技を楽しめた。
主人公との淡い恋愛模様描写は、本作での良いところ。

ただ、その流れは離縁した父親との再会後に訪れる主人公の感情の変化から止まってしまう。
主人公は生みの親(とも呼べない)と育ての親(にしては出しゃばり)の板ばさみになり、そ のあとの作劇はエンディングまで、観ていてフラストレーションがたまる一方なのだ。

幼少期から口元を隠し、エンディングで主人公と対峙するラスボスが「ああいうこと」なのも、とってつけたような説明展開で、ミサンガの件とか、何で知ってんだよ?とか感じたけど、気づく描写あったかしら。しかも、そっちの「育ての親」は事態の解決に一切絡まないって、どういうこと?!もうひとつの側の葛藤が一切ないのが、弱いところかなと。

重箱の隅的だが、渋谷の街と、渋天街を行き来する、ルートって、そう簡単に見つかるものなの?とか、役所広司が声をあてた師匠のそれは、どうもパコと魔法の絵本の配役イメージが増幅してしまい、乗れませんでしたね。

可哀想だったのは主人公の少年期の声をあてた宮崎あおい。敢えてなんだろうけど、あの棒演技はないわ。

カメラがレールの上を移動するようにただのパンではない、対象物が左右にフレームインするコンテはちょっとくどいかな。

最後に、主人公は9歳で小学校をリタイアし、教育を17歳まで受けてこなかった。だからだろうけど、「たにんごと」と口にする。「他人事」は「ひとごと」と読む。ここは素直に演出、としておこう。

もうひとつ、ついでに。物事の優劣を「武闘」で判断するっていう、こういう手法、もう飽きた。DBしかり、マッドマックスしかり。
個人的には、いかにも前時代的な気がする。「響け! ユーフォニアム」を見た直後だからかもしれないが。



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