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【追記あり】映画『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』を観た。


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京都アニメーションの新作映画『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』を観た。


anime-eupho.com


4週目~5週目の入場者プレゼント(35mmフィルム)が配布決定したことですし、まだまだ興行的も伸びそうですね。GW中は満員回もありましたし。

武田綾乃はんの『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』前・後編を原作に、2018年公開の劇場作品『リズと青い鳥』で描かれたパートを除いた部分を本作では追っていきます。
みそれと希の関係性にスコープした『リズと青い鳥』を独立した作品として山田尚子監督に任せたわけだし、よって、結果的に同作でフィーチャーされた1年生の剣崎梨々花は〈ダブルリードの会〉同様、今作ではセリフは1場面のみ。みぞれと希に至ってはセリフは一切ありません。
その代わり、『リズ』でセリフがなかった奏やダブル鈴木、そして同作では登場すらしなかった求といった1年生キャラに焦点が当てられ、そのキャラクターがDIGされます。
また、後藤卓也や長瀬梨子の活躍(出番)が増え、同じく3年生に上がった中川夏紀や吉川優子、去年Bパートだった加部友恵の出番がほぼ原作通り進行します。因みに、友恵はキャストとしてのクレジットはなく、TVアニメ番外編『かけだすモナカ』(必見の傑作)でも「チームもなか」メンバーのクレジット止まりです。役者は田所あずさはんだと思いますが、彼女はTVアニメでは佐々木梓役としても起用されていて、重宝がられていますね。
という感じで、原作をなぞってはいるけれど、如何せん100分の尺に『リズ』関連のパートを抜いたとはいえ、原作2巻分を詰め込む無理をしています。サンライズフェスティバルの本番に美玲と葉月のトラブルを持ってくるとか、かなりリスキーな改変をしていますし、奏のクズっぷりが、原作ほど掘られていないので、ちょっと消化不足なのは否めません。加えて、原作のスピンオフ短編集『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話』のエッセンスも若干引っ張ってきているので、なおさら。


では、ストーリーのおさらいです。

 

【ストーリー】昨年度の全日本吹奏楽コンクールに出場を果たした北宇治高校吹奏楽部。2年生の黄前久美子は3年生の加部友恵と、4月から新しく入った1年生の指導にあたることになる。全国大会出場校ともあって、多くの1年生が入部するなか、低音パートへやって来たのは4名。一見すると何の問題もなさそうな久石奏。周囲と馴染もうとしない鈴木美玲。そんな美玲と仲良くしたい鈴木さつき。自身のことを語ろうとしない月永求。サンライズフェスティバル、オーディション、そしてコンクール。「全国大会金賞」を目標に掲げる吹奏楽部だけど、問題が次々と勃発して……!?北宇治高校吹奏楽部、波乱の日々がスタート!(公式サイトより) 

 
4回鑑賞して、原作との差異を含めて気づいた点をいくつか挙げますね。

*原作での美玲の癇癪はサンフェス前に発生し、収束している。
*2回出てくる久美子のジャンプショットが効果的。
*夏紀と奏の〈ハッピーアイスクリーム〉演出もいいね。
*優子のバトンキャッチミスは『たまこま』オマージュ。『サムデイ・・・』。
*TVアニメシリーズではオミットしてきた久美子と秀一のイチャイチャ描写に2828。
*原作では、京都府大会に応援に来たのが葵と晴香。関西大会に応援に来たのは香織とあすか、だ。本作では斉藤 葵ごと京都府大会を省き、前作で全国大会まで行った元3年生をまとめて応援によこした形だ。
そして、あすかが久美子に謎のひまわりの絵葉書を手渡す件は原作通り。絵葉書が持つ意味は短編集で語られています。葵と晴香という組み合わせの訳も。
でもこの際、原作にあった、あすかの意味深なセリフが劇中では省略されています。
「一回だけなら助けてあげる」
あのひまわりの絵葉書を今後どう転がすのか、今のところ、原作にもその記述がないため判りません。制作陣も原作の行方を知らされていなかったのでしょう。
*本作でのサンフェスの衣装ですが、あんな浮かれた格好してるからダメ金なんだよ、と言いたくもなりますね。鬼軍曹の松本美知恵先生は反対しなかったんでしょうか?
生徒の自主性を重んじたのでしょうか。
*サンフェスの衣装はマーチャンダイズ的な仕掛けも狙ってデザイン優先で仕上げた印象で、グッズ販売で展開されているイラストだと映えますね。でも劇中では上手く動かせていない印象です。
*加部友恵が奏者を辞めてマネージャーへ転向する件は、先ほど書いたTVアニメの番外編『かけだすモナカ』でチームもなかだった森田しのぶや加藤葉月メンバーとの関係性を意識した演出となっていますね。夏紀はあまり堪えていないようでしたが。
*これも尺の都合上、また、『リズ』でも描かれていたためか、プールのシーン短かすぎ。
*新歓で夏紀がギターを演奏しているのにも若干の違和感を感じましたけどね。
声質の限界なのかも知れませんが、夏紀のキャラ声ではあまり張った演技というのは難しいのかも知れませんね。
*ラスト、ホールでの演奏シーン、盛大に3DCGって判っちゃう俯瞰カットがあって気になりました。
*意外ですが、久美子のモノローグがなかった気がします。『ユーフォ』シリーズと言えば、久美子の独り言、というか心の声、だったと思いますが、敢えてでしょうか、本作では使われていないですね。単に原作で使用頻度が減ったからでしょうか。
*テレビ放送の13回に分けて描けたなら、1年生のキャラ造形にも深みが出たでしょう。しかし、後述する理由で致し方ないか。

といったあたりです。しかし、そんな細かいことが気にならないくらい、全体の仕上がりはいいと思いました。アヴァンから卓也のプラカード、そしてタイトルバックの流れで、すでに落涙していましたし。

劇場版の演出が複数名で展開されているのも、最近の京アニはんの傾向で、本作だとチーフ演出に山田尚子はん、そのほか、北之原孝將はん、武本康弘はん、小川太一はん、澤 真平はんという重鎮組と、太田 稔はんという若手を起用している。
結構気になったのは、この演出班とこれに紐付くであろう作画監督/原画マンの組み合わせにより、シーンごとに結構絵柄が変わってしまうという点が、劇場版という区切りがない尺の中で悪目立ちしてしまう点です。気になったのは特に人物デッサンです。麗奈の脚の太さとか、1年生はまだスカート丈が長いので、久美子たちとの体形のバランスが気になりました。何方がどのパート(範囲)を担当されたのか教えて欲しいですね。BDのコメンタリに要望を出しておきましょう。このあたり数度見返して予想してみるのもおもしろそうです。

またサンフェスのシーンに戻りますが、あのシーンは全般、体型デッサンが雑な気がしますし、原作から私的に感じたイメージでいうなら、鈴木美玲はあんなにグラマーじゃないと思います(個人の感想です)。吉川優子のバストラインが強調されすぎな点も気になりました。でも、この作品を通して、一番輝いて見えた1年生は鈴木美玲だったと思います。

それと決定的だったのが、演奏された曲です。「Samba de Loves You」という曲ですが、これって吹奏楽の世界では広く知られているようですが、前作の「RYDEEN」で感じた躍動感を今回は感じられなかったですね。これも今作の特徴かもしれませんが、OSTを除く劇中曲がより吹奏部を意識した玄人受けするものになっていると感じました。「Samba de Loves You」もそうですし、「リズと青い鳥」も第4楽章を区切っていますし、「三日月の舞」とは設計思想が異なる気がします。

サンフェスの楽曲は別として、本来、テレビアニメのように、数回に分けた反復がないため、本作『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』における楽曲の印象は薄く感じると言わざるを得ません。わざわざスピンオフ作として公開した『リズと青い鳥』の表題曲もそうです。劇中演奏曲に対する思い入れがどうしても薄くなってしまいますね。

劇場版プログラムを拝見したが、座談会、冒頭のコメントが気になりました。宝島社と武田綾乃はんは、制作委員会の一員じゃないようですが、京アニはんがオリジナル続編を作ってしまえる環境であることが窺える、少しショッキングな件です。
小日向夢の件も座談会では出てきますが。劇中で彼女がフィーチャーされるシーンはほとんどありません。丸ごと原作ごとカットされています。
因みに、関西大会に応援に来た香織に、往年の「まじエンジェル」発言をしてしまう優子に対し、「先輩・・・」と絶句するのが夢です。

(主に奏が撮影したと思われる)スマートフォンの縦長動画は、山田はんのアイデアなんですかね。今どきの風潮を上手く切り取ったアイデアだと思うし、パンしない限り背景を描かなくていいという利点もある。〈部内の情報通〉という原作の奏というキャラを意識させる演出だと思いました。


サントラで確認するのが楽しみなところは、松田はんの「はじまりの旋律」ダウナーヴァージョンですね。従来の楽曲から中盤、大きくマイナーに転調するがっかり感が本作の聴き処ではあるのですが、もちろんこれがテレビアニメ3期への布石である点は期待と同時に指摘させていただきたいところではあります。この曲の原曲が全国金受賞の際、使われるであろうことを。

そして原作『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』後編のラストで黄前久美子部長を軸とする新体制が発表され、劇場版でも、奏が撮影する(撮影しているさまは終ぞ描写されない)スマホ動画で新体制は久美子部長であることが明示されたのです。「よろしくお願いします!」と。

加えて既報の通り、武田綾乃はん原作の続刊、『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 前編』では、3年生となった久美子達の北宇治吹奏楽部にユーフォの超絶技巧? を持つ3年生が入部! な訳です。

アニメの続編が展開できる下地はできている訳ですし、実際、展開は裏で密かに進んでいるのかもしれません。現時点では不明ですが。なんにせよ今の京アニはんの進行だと、いくら早くても2020年4月(ほぼ無理)でしょうし、観せるにはTVシリーズだと思うのです。奏たちも2年生に進級し、また1年生も入部してきます。もはや劇場版ではそれこそ尺が足らないでしょう。

思えばこの『響けユーフォニアム』シリーズは終わりのない物語故のジレンマをずっと観客に抱かせる意地悪な装置なのだ。原作では久美子達が3年生へ進級し、高校時代最後のコンクールで全国金を取るか取らないか、という出来レースが組み上げられており、この流れを受けて、「じゃあ京アニはんはんどうすんの?」という醒めたコメントもしたくなる状況です。

だって、お話の結末も含め、本作は次回作へのブリッジでしかありませんから。

思い返すに、京アニはんは原作に恵まれないな、と感じています。原作への向き合い方と言ってもいいでしょう。出版社との関係といった大人の事情は窺い知ることもないわけですが、menehuneが同社のアニメーションにのめり込んだきっかけとなった『けいおん!』以降のことでしか語れませんが、同作にしても、芳文社から続編コミックが刊行されるも、アニメーション版が綺麗に終わりすぎたためか、続編の話はなくファンをやきもき(でもないか)させましたし、『氷菓』にしても米澤穂信はんの続刊が遅々として刊行されないこと、かつ、『遠回りする雛』でアニメの展開上うまく着地していたこともあり、これもファンをやきもきさせています。ストーリーを追う必要のない『日常』は置いておくとして、『小林さんちのメイドラゴン』も続編制作が決定し、原作とアニメの結末が気になるところです。
『聲の形』も原作とは異なる結末、構成でしたし、『境界の彼方』『中二病でも恋がしたい』『無彩限のファントムワールド』など、KAエスマ文庫の原作を除き、観るものに、幾何かのフラストレーションを与えてしまう結果となっています。

『響け!ユーフォニアム』シリーズも同様です。タイトルチューンのネタ明しがされた、田中あすかが卒業するあそこで、綺麗に終わっていればよかったと思います。
しかし、そうは問屋が卸さない。ここまでくると、卵と鶏のたとえを出すまでもなく、これ、どこまで付き合わされるんだろう、と感じてしまうファンも少なからず生んでしまうでしょう。
現在上映中の『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』は、見どころが多いとはいえ、物語が完結していない以上、所詮、「つなぎ」でしかありません。宝島社はんは、武田はん原作の久美子達3年生が全国金(以上?)を再び目指す続編をしれっと刊行しています。こうして、一部のコアなファンたちは、また数年後に実現するかどうかのアニメ続編に期待せざるを得ないのです。決して諦めからではなく。
その結末は、もちろん原作の着地に左右されるでしょうけれど。
それゆえ、今度こそは、丁寧にTVシリーズでやってくれないと、納得いかないファンは多いでしょうし、スタッフ、キャストと観客が若いうちに完結させるべきだと思うのです。

【追記】
これは言っても詮無いことなのですが、この『響け!ユーフォニアム』シリーズでは、強豪校といわれる他校の演奏を聴くことができません。
それでもTVシリーズでは要所要所でごく一部ですが、他校の演奏を演出的な余裕もあったため聴くことができました。
当時のTVアニメの劇中では省かれましたが、原作ではなぜ「三日月の舞」 を引っさげた北宇治が全国に進めたのか、その遠因として、表現としての是非は置くとして、強豪校のメンバー交代に触れる場面があります。ライバル校が自滅した、というね。

本作でも「源ちゃん先生」なんていうふざけたあだ名のポッと出の高校があっさりと北宇治を捲って差されてしまいます。これはTVシリーズ2期で北宇治が全国出場を果たした構図と全く同じではありますが、それでは本作で全国行きを果たした龍聖学園高等部の演奏がどんなで、どんな練習をして、月永源一郎はどんな指導者なのかが見えないわけです。これは観ていて案外ストレスですね。

結果を知る過程を持たないという意味では、視聴者は久美子たちと同じ条件であると言えるでしょう。

TVアニメで香織と麗奈がトランペットのソロパート・オーディションで優劣を決めた際、吹奏楽部員の大半が悟ったのと同じように、コンクール会場での優劣は出場する側では判断することができません。故に、決して後悔しないため、全力で上手くなるしかないのです。

ただ、仮に現在進行中の原作最新作が映像化されたとして、今まで書いてきたことと展開は同じにならざるを得ないと同時に気づいてしまうわけで、これが出来レースと書いた所以です(それ以上の展開があるなら別)。感動は得られるでしょうけれど、TVシリーズ1期、2期を超えるものになるかは不透明と言わずを得ないでしょう。京アニはんにとって、続編制作のハードルはとても高いはずです。(追記了)

 



入場特典、公式サイトでアナウンスされていた順番通りだった。つまり、3回観ていずれも一番左のやつ。久美子ともう一人が絡んでいるヴァージョンですね。邪推すると、この組み合わせを1番多く刷っているんだと思うしかないくらい。


もらったオリジナルコースター
割合としては左から5:3:2だと勘ぐってみたりして。でも、今日4回目を観たら、麗奈&滝だった。やったね! って、エロいです!(menehuneは売らないけど)これはオクで高値が付きそうです。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 

 

 


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